音をみる、光をきく。|Ears see, eyes hear.

「五感」というけれど、感覚がきっちり五つなどに分類されるはずもない。演奏の名手には音は「見」えているだろうし、写真の達人は光を「聞」き、影と「話」せるにちがいない。 正法眼蔵という不思議なテキストには、「禅」とか「仏教」などという分類枠を適用することが無意味に感じられる瞬間がある。たとえば「眼睛」巻に引用された、如浄によじよう の偈げ。 瞿曇打失眼睛時 |瞿曇くどん、眼睛を打失せる時 雪裡梅花只一枝 |雪裡せつり に梅花ばいか只一枝なり 而今到処成荊棘 |而今いま、到る処に荊棘けいきよくを成し 却笑春風繚乱吹 |却かえ って春風の繚乱りようらんとして吹くを笑ふ 瞿曇くどん(ブッダ)が「眼睛」を失うとは、二重の意味がある。一つは視力の衰え。ブッダは八十年の長寿を生きたと伝えられるから、晩年、白内障などにより視力が低下した可能性は高い。もう一つは、眼睛=覚りの眼で、それを失うとは、仏教全体にとっても重大な意味をもつ。無上の悟りを得たブッダがそれを失うということが、ありうるのか。全体が白く雪に覆われてしまったその視野に、梅花がただ一枝。荊のようにごつごつした樹影は、そのまま老瞿曇の姿に重なる。雪中、繚乱として吹く早春の風に、ブッダが笑う。 なんて下手くそな解説だ。。。 四行目の「却」が深い。眼は失ったが、かえって全身が眼になったということか。あるいは弓を用いずして射る名人伝説のように*1、不射之射、不見之見の域に達したのか。   Classifying is just a means for particular puropses and, if it stays fixed, will be useless or even be able to confine us within the grids of classification which we have created for ourselves. Perception, for example, is a general phenomenon that... Continue Reading →

ジョイントを交換せよ|Buddha’s project to redesign the society (2/2)

ブッダはどうしたか。 ブッダは、言語に「オブジェクト指向」を導入した。つまり、人々の交す言語に、仏法というオブジェクトを追加した。それはまだ見ぬ認識風景の集まりみたいなもので、ブッダ自身、「我は無い」とか、「あらゆるものは無常だ」といった程度の最小限の内容しか与えていない。だがこのオブジェクトを設定することによって、そこに様々な属性を定義していくというプログラムがひきおこされる。ただ言葉を交すのではなく、仏法について言葉を交す。これによって仏法経由の言語が日常の言語空間を浸潤していく。同様の試みが西方で「神」オブジェクトによって開始されており、それがやがてイエスによって、次にムハンマドによって更新されることを、ブッダは知らない。 だからブッダは人々に向かって説法した。ひたすら仏法言語を拡散することに努めた。黙って自分だけ「さとり」に浸っている場合ではなかった。 道元に語ってもらおう: 大道十成するとき説法十成す 法蔵附嘱するとき説法附嘱す 拈華のとき拈説法あり 伝衣のとき伝説法あり このゆゑに諸仏諸祖おなじく威音王以前より説法に奉覲しきたり 諸仏以前より説法に本行しきたれるなり 説法は仏祖の理しきたるとのみ参学することなかれ 仏祖は説法に理せられきたるなり |正法眼蔵第四十六・無情説法 つまりこう言っている。仏法を経由する十個のコードは十の言葉として人々に共有され、一揃いのプログラムが与えられれば一篇の物語となって拡散する。華を拈れば華を説き、衣を伝えれば衣を説く。こうして仏祖たちはみな永劫の昔から仏法の言葉を創り、広めつづけた。しかも、仏祖が仏法言語を創っただけではない。仏法言語が仏祖を創りもしたのだ。   The strategy Buddha developed to change people's way of using their language can be called 'object-oriented-ness'; he added an absolutely new object, dharma, to the language people spoke. It is kind of a yet unknown collection of facts and truths about yourself, your experience, the world you... Continue Reading →

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